第7章 お宝探しにご同行〜
「目を開けていいよ。」
虹彩の動きは問題なし。
角膜の状態も問題なし。
イタチは少し目をパチパチさせて、馴染ませてから傍に座った私を見た。
「遠くを見てみて。多分違いが出てると思う。」
イタチは立ち上がると窓辺に近寄り、窓を開けた。
冷たい空気が流れ込み、澄み切った青空と景色が広がる。
「…よく見えるな。」
イタチから驚いた声がぼそっと聞こえた。
「どう?やった甲斐あるでしょ?」
隣に立った私は得意げに胸を張る。
イタチはそれをちらっと見て、また景色に目を向けた。その横顔は少し嬉しそうにも見える。
「そうだな。こんな綺麗な空を見たのは久しぶりかもしれない。」
「そっか…。」
私にとってありふれた日常。
だけど、イタチにとっては久々の青空なのね。
「見えるってさ、楽しいよね。」
見えないより見えた方がいい。
見たくないものを見ることもあるけど、その分綺麗なものを見た時には何倍も癒される。
不意に視線を感じて見上げると、少し驚いたようにこちらを見ていた。
「何?」
少し首を傾げて問うと、一瞬はっとしたような顔をして、何でもない、と言うように緩く首を振って笑う。
「いや…。そうかもしれないな、と思っただけだ。」
「でしょ。」
私も笑い返すと、益々笑みが大きくなった。
「エニシ。」
「何?」
「ありがとう。」
そう言って頭を撫でた後、不意打ちのように頬を包まれて親指でなぞられる。
私の心臓は、どきんと大きく跳ねて、途端に早鐘を打ち出した。
イタチは、二、三回撫でると気が済んだように部屋の片付けを始めてしまう。
な、なんだったの、いまの…?
お、おちついて、れ、れいせいに…。
し、しんこきゅう…しんこきゅう…。
………。
うわあぁぁぁぁ〜!
ああいうことさらっとやるから天然だっつーのよ!!
えぇえぇ!意味がないことくらい知ってますとも。
距離が近いだけの戯れなんですよ、きっと!!
分かってても反応しちゃう自分が悔しいぃぃ!!