第1章 プロローグ
轟々と流れていく水の音が響く。
初代火影とうちはマダラの間に流れる水は、そのまま二人の溝であるかの様にも見える。
その象の、うちはマダラの上で、兄であるシスイは漸く私の手を離した。
けれど、目の前の兄ちゃんは影分身。
異様な状況だと言うのは、記憶が戻ったその時は理解できた。
『俺はもう助からない。』
告げられた言葉は絶望で、自分は酷く無力だと思い知った。
『どうせ終わる命なら、俺はイタチに最後の力を託したかった。』
何よそれ、と一瞬怒りが込み上げた。
それと同時に一際大きい痛みが全身を駆け抜けた。
逃げてって言ったのに、とか。
私の願いよりイタチを取るのか、とか。
お別れなんて嫌だ、とか。
色々言いたい事が次々と浮かんできたけど、あまり言葉に出来なかった。
『エニシなら生きていける。一人でも生きていける。』
酷い言い草だと思う。
この残酷な世界に一人ぼっちで生きていけ、だなんてさ。
…そう言うしかなかったんだろうけど。
『お前には、まだ目的があるだろ?』
『イタチとサスケを止めろ。その争いが不毛だと思うなら、お前が止めてやれ。』
兄ちゃんを亡くしてまで頑張れないって思った。
でも…
『兄ちゃんはいつでもお前の傍にいる。いつもお前と一緒だ。だから、生きていってくれ。この先も、ずっと。』
そんな風に抱きしめられたら…
乞い願う様に言われたら、受け入れるしかないじゃん。
それを最後に兄ちゃんは消えた。
跡形もなく無く消えた。
多分この時に私の万華鏡が開いたんだと思う。
それからの記憶は曖昧で…。
追手として来た根を討ち返りにしたのは覚えてるんだけど、それ以外のことはよく覚えていない。
今思うと、よくあの街に辿り着いたなって思う。
で、都合よく綱手様が居たもんだと。
そのお陰で私は今、三番目の弟子としてここにいる。