第2章 ここから、また始まる
「すみません、綱手様、シズネさん。私、今すぐ行かなきゃならなくなりました。」
もう、いつ物語が動き出しても不思議じゃない。
いや、もう実際にはずっと動いてるんだけど。
そうじゃなくて、私はある出来事を書き換えたいと狙っていた。
「きっとイタチが動く頃合いだと思います。だから…」
「行ってこい。」
最後まで説明を聞く前に、綱手様は私の言葉を遮った。
「えっ…。」
思わず、ぽかんと綱手様を見ると、少しため息をついて微苦笑を浮かべた。
「本来はそれが目的で私に弟子入りしたんだろう?」
イタチを治す。
それが私の最大の生きる理由。
「そうですね…。」
正直言えば忘れている時もあったくらい、今の生活は目まぐるしくて、でも穏やかだった。
けれど、同時に私はこのぬるま湯に浸かったまま過ごしたら、きっと緩やかに生きながら死んでいくだろうな、っていう予感もあった。
「綱手様、シズネさん、今までお世話になりました。」
私は精一杯の感謝を込めて深々と頭を下げる。
教わるべき事は全て教わった。
何の気まぐれか、百豪の術も教えてもらえた。
まだ会得できていないけど、概要とコツはバッチリ覚えた。
「いってらっしゃい。元気でね。」
「死ぬんじゃないよ。」
二人は穏やかに微笑んで背中を押してくれる。
「はい!行ってきます!」
私はすぐ様飛び出して、木の葉へと向かった。