第6章 名前呼び
リョ「あ、謙也さんと田仁志さんは先に行ってて下さい」
謙也「なんや越前、どないしてん」
リョ「すぐ追い掛けるんで」
そう言うと越前は花鈴の手を取り走りだす。「私なら大丈夫」と言う花鈴に「ミッションだから」と人気の無いメインコート近くまで送る越前。
リョ「俺、これ以上はバレるしミッションは俺達の任務だから」
花鈴「ありがとう、頑張ってね」
リョ「ん……じゃ俺行くから」
花鈴「あ、待って!」
謙也達の所へ戻ろうとした越前を引き止め「帰ってくるよね?」と少し不安げな声で聞く花鈴。すると越前は振り返り「とーぜん」と応えた。
リョ「ちゃんと戻って来る」
花鈴「うん」
リョ「絶対に戻るから待っててよ、花鈴」
花鈴「……えっ、今名前……」
リョ「……ダメ?」
名前を呼ばれて驚く花鈴は首を横に振り「良いよ」と頷いた。
花鈴「でもどうして急に?」
リョ「急じゃない、ずっと呼びたかった」
花鈴「そ、そっか……///」
リョ「それじゃ、俺行くから」
照れる花鈴を余所に越前は走り去っていった。その後、先にミッションをしていた謙也と田仁志に合流。
田仁志「お、来たか」
謙也「遅いで越前って……その顔どないしたん」
リョ「……ちょっと急いで来たんで」
越前の顔は帽子で隠していたが頬を赤くして照れているような表情をしており、何かを察した謙也は「ほほう」とニヤニヤしながら越前を見ていた。
ーー貴方side
リョーマ君にメインコートまで送って貰った私は急いでモニタールームへと向かった。かなり遅くなってしまったが帰って来た事を報告する為だ。
花鈴「失礼します!……あ、齋藤コーチ」
齋藤「おかえり〜って、びしょ濡れじゃん⁈」
花鈴「え、あ……大丈夫ですよ?」
髪や服は濡れていたが絞っていたし報告後に着替えれば良いと思っていたが、齋藤コーチに早く着替えておいでと部屋の外へと背中を押される。
齋藤「黒部コーチには僕から伝えておくから」
花鈴「いやでも……」
齋藤「君は女の子なんだから、分かった?」
花鈴「は、はい」
反論は許さないという笑顔で戻るように言われた私は部屋を出て自室へと歩き始めた。途中、廊下を歩いていると室内トレーニングを終えたらしい徳川先輩に声を掛けられた。