第3章 芽生え始めた想い
ずきん…。
まただ、この痛み。本当になんなんだろう。
スモーカーさんとヒナさんの付き合いの長さを見せつけられた気がして、さっき高鳴りももう止んでしまっていた。
「今日は色々迷惑かけたな。あとはゆっくり休め」
「はい…。スモーカーさんも早くお休みになってくださいね」
謎の胸の痛みを抱えながら、アンナの自室の前まで戻ってきてしまった。
ゆるりと手を振って去ろうとする上司の後姿を見て、考えるよりも先に手が彼の服を掴んでしまっていた。
「あン?どうした」
振り向いた彼の顔にはいつもだったらある眉間の皺はなくて、一目で気分がいいんだろうなと察することが出来た。
「…ヒナさんと飲んだからなんですか?」
「あァ?」
「いつも部下の私たちの前ではそんな顔しないじゃないですか…」
「そりゃあ……仕事中はな」
スモーカーさんの返答は至極当然である。
だけど私は自分の中にある感情が抑えきれずに、思ったままのことを言葉にしていた。
「スモーカーさんにとってヒナさんは…どんな存在なんですか?」