第2章 初めての異動
鳥のさえずりと共に、窓からは昇り始めた太陽が見えていた。
そしてつい先ほどすべての資料に目を通し終わり、なんとか始業の時間の前に終わらせることが出来た。
「お、終わった……!」
カフェインで眠気をだましながら頑張っていたが、終わった達成感と安心感からか、どっと疲れと眠気が襲ってくる。
(あ…これやばいな……)
そう思ったときには、アンナはすでに意識を手放してしまっていた。
そんなアンナの様子を見ていたスモーカーは、突然動かなくなってしまった部下に驚き、思わず椅子から立ち上がり、彼女の元へ駈け寄った。
するとそこには机に突っ伏し、オチてしまったアンナの姿。
おまけにのんきに寝息もたてていて。
「……ったく、ビビらせんなよ」
そう思いながらも、ここまで付き合ってくれ、見事終わらせてくれたことに感謝の気持ちがあるのは確かだ。
「せめてギリギリまで寝かせてやるか……」
クローゼットから洗い立てのブランケットを取り出すと、それをアンナの身体にかけてやる。
するとぴくんと体を震わせ、起こしたか?と思っていると、
「むにゃ……もう食べれないよーー……」
「ふっ…どんな夢、見てんだか」
アンナの口からなんとも間抜けな寝言が聞こえてきて、それに笑みがこぼれてしまう。
この支部の長として、部下の前では滅多に笑わないこの俺が、だ。
そういえばこいつがきてから、なぜかこんな風に穏やかな気持ちになるときが多いなと思い返した。
このとき、スモーカーはまだ気づいていなかった。
自分に芽生え始めている気持ちの正体を……