• テキストサイズ

【ONE PIECE】想いは風にのってどこまでも

第1章 プロローグ




残されたアンナとエース。


何も言えない気まずい空気が2人の間に流れる。

これは自分から言わないといけないなとアンナは頭を抱えた。


何度も謝るシミュレーションをしたけれど、いざ本人を目の前にするとぱっとその言葉が出てこない。

するとエースが先に口を開いた。



「……返事、聞かせろよ」



いつもより少し低いエースの声に、この状況でどきんと胸が高鳴ってしまう自分に嫌気がさしてしまう。


そんなことは知らないエースは近くにある椅子にドカッと座り、私の方をまっすぐに見つめていた。

ちゃんと言おう。
姉として、私がけじめをつけなければ。

すうと深呼吸した後、アンナはあの返事をした。



「……ごめんエース、私は行けない。

あなたの想いにも応えられない……!」


「っ……そうかよ」



苦々しくそう呟き、自分の髪をぐしゃっとするエース。

そうさせたのは自分。
なのに彼を傷つけてしまったことにずきんと胸が痛む。

なんて言葉をかけようか迷っていると、先にエースが椅子から立ち上がった。



「わりィ……俺、行くわ」

「え、エース、」



待って!とエースの手を掴もうとした手は、その彼の手によって振り払われる。



「……フッた男に情け、かけんな。
いまお前の顔を見るのも、声を聞くのも……きつい」



こちらを全く見ずにそう言い捨てると、エースは自分の手荷物を持って家から出て行った。



私は1人エースの家に取り残され、呆然と立ち尽くしていた。

エースにあそこまではっきりと拒否されたのは初めてで、手が少し震えている。



でもそうなるほど彼を傷つけたのは自分で

彼に嫌われることを望んだのも自分で


嫌われたくないと思ったのも
自分だ




「うっっううう……」


ぽろっと自分の目から涙がひと粒零れ落ちると、とめどなく次から次へとあふれ出てくる。


これでよかったんだ。
エースのためにも、自分の為にも。

そう自分に強く言い聞かせた。


だってそうじゃないと前に進めない気がしたんだ

エースにもらった指輪を強く握りしめ、アンナは祈った。




『私のついた最初で最後の嘘がいつまでもバレませんように……』



/ 49ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp