• テキストサイズ

夜と月と雨が降っても

第1章 月から










髪を洗って、シャワーで流す
泡が流れていく感覚を頭で感じながら
特に何かを思うわけでもなく身体と頭に当たるシャワーだけに感覚がある
髪をまとめて、チャポンと音をたてながら
ゆっくりお湯に浸かる
あったかい…………
じんわりと広がる温かさ
ふんわりと香る入浴剤
湯船の縁に後頭部をのせて、足を伸ばすと
浮かんでくるあの人のこと
その存在を「あの人」と呼んでいいのかなんて
またあの存在がどういう存在なのかを確かめるように
確かめたところで確かめることなんかできないのに

「リョーマくん……」

そしていつものように言葉にするその名前

どうしてお風呂の中というのはこんなにもセンチメンタルな気分になるのだろう
センチメンタルと言えば聞こえは可愛らしいし、恋に恋する乙女なのに

きっと明日は話しかけようとか
きっと明日はLINEしようとか
きっと明日は
きっと明日は
頑張ろうという気持ち
頑張れない
どうにかしようと頑張れない
どうして彼じゃなきゃ駄目なんだろう
どうして恋心なんだろう
彼は2次元で、自分は違う
毎日毎日繰り返し思っても答えなんか出やしないんだ



身体の水分を吸い取って
突っ張った顔に水分を含ませて
眠る前のそれに身を包めば一旦はそんな進退両難もなくなる
ゲームを開いて眠る前に彼を感じて
明かりを消して
暗い部屋の中で、ふとんに身を任せると
また繰り返し浮かぶ感情

どうして彼じゃなきゃ駄目なんだろう
どうして恋心なんだろう
目を閉じると浮かんでくるあんな表情やこんな台詞
こんな感情は消したい
消したくて消したくて堪らないのに

好きで好きで堪らない
彼に愛されたい
彼に必要とされたい
彼に触れたい、触れられたい
自分も
リョーマと
話したい
/ 8ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp