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溺愛巫女は、喰べられたい

第1章 人、ならざるもの



「ほらね」


ストン、て手すりから降りて。
ユーリがあたしを覗き込む。


「どーする?尊」

「………っ、んで。咬んで。ユーリ」



こんな時、狼に何言っても伝わない。
伝わない、なら。
邪魔なものはただひとつ。


「………りょー、かい」



ニコリと笑うと。
ユーリは首筋へと唇を寄せて。
舌が、肌を這う。


「………っ」
「どーかした?」
「………締め付け、やば」
「まだ咬んでないよ?そんなにいいの?咬まれるの」
「ち、が………っ」
「いいから早く、咬めって。そろそろキツいんだけど」
「はいはい。ほんと、狼ってば我慢できないよね」

「…………っ、ユーリ」

さっきから首に硬いもの、当たって。
身体が期待する。


「わかってる。ごめん、意地悪した」

ぐ、って。
肌に押し当てられる、鋭いもの。

「いただきます」


「っ」



次の瞬間。
肌を突き破って牙が入り込む激痛。
未だにこれには、慣れない。

だけど。


じゅるじゅる
ゴクン ゴクン ゴクン

て。
血が、吸われていく。
吸われていく度に感じるのは。


「…………っ、ぁ、」


血流に乗って、全身をユーリに撫でられてるかのような。
錯覚。
血液からユーリの鼓動を、感じる。
ああ駄目だ。
これもう。
理性、とぶ…………っ。


「ユーリもういい。さっきもおまえ血のんだろ」
「のめっつったりやめろっつったり。忙しくね?俺」
「尊平気?俺もう動いていい?」
「スルーですか、狼さん」

ああだめ。
もう。
頭、ぼーっとする。
考え、なんにもまとまらない。


「…………」
「…………」
「…………いつもながら、お見事」

「かわいいっ、尊」

「ひゃう………っ」

正面からユーリに抱きつかれただけで。
全身がゾクゾクする。


「尊、キスしよっか?好きでしょ?キス」
「………うん」
「かわいい。ほんと、かわいすぎ」
「………ユーリとキス、だいすき………」

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