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溺愛巫女は、喰べられたい

第1章 人、ならざるもの




ズキン



夜、寝てる時に右足に感じた激痛で目が覚めた。

(何、これ………)



あまりの痛さに布団をめくれば。
シーツに広がるぬるぬるのシミ。
痛みの場所を手で触ると、そこはたしかにパックリと割れていて。

「うそ………っ」


その場所に群がり血を啜る、真っ黒い影。


「やだ………」



なんで。
なんで。
どーして。
痛くて痛くて。
助けを呼びたいのに恐怖で声が出ない。


「っ」



怖い。
痛い。
寒い。

助けて。
誰か。
お願い助けて…………っ



「………だから言ったじゃん」

(え)

「狼は分かりにくいんだよ。気をつけて、ってちゃんと教えてあげないと」



恐怖と痛みでパニックな頭がさらにパニック。
だって。
突然窓から現れた男の子ふたり。
歳は、あたしと同じくらい?
だけど。
だけど。
片方の男の子、耳と、尻尾がある。



「あんた、そんないいもん持ってんのにこんなやつらにビビってんの?」
「普通怖がるんだよ、狼」
「ほんと、面倒。人間て」

(…………人間、て?)

さっきまで確かにベランダの手すりにしゃがみ込んでたのに。
一瞬で、気付けばすぐ隣。
手を伸ばせば。
黒い影は一瞬で消えた。


「え…………」


消えた。

…………消した?



「あとはその、出血だよね」
「ユーリは手出すな。おまえ抑え効かなくなるだろ」
「はいはい、お願いします狼さま」
「いちいちムカつくやつ」



(え)


フサフサの耳が、太腿に触れてくすぐったい。
彼は徐にその傷口に口付けたんだ。

「え、あの………」
「しー。大丈夫。動くと痛いからじっとして」


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