• テキストサイズ

溺愛巫女は、喰べられたい

第4章 はじまり




…………とか。


思ったばっかなのに。




「巫さんどーしたの?帰らないの?」
「あ、傘ないなら一緒に入ってく?」

「え」


あ。
やばい。
今顔ひきつったの、見られた。
せっかく好意で誘ってくれたのに。
あたし。
また。



「ご、めん。教室に忘れ物…………」




やばい。
やばい。
ばれた。
今。
あの、黒いの。
あたしが顔ひきつったの、見てた。
顔とか全然わかんないけど、なんだろ。
何となくわかる。


何でかなんてわかんないけど。
捕まったらいけない気がして。
全速力で階段を登った。



来ないで。
来ないで。
来ないで…………っ。




勢いよく教室のドアを、閉めて。
しゃがみ込む。
のと。
教室のドアが開くのが、同時で。



「やぁああああ!!お兄ちゃん!!」



頭抱え込んで。
小さく丸く、しゃがみ込んだ。



けど。


「誰がお兄ちゃんだよ」

「大丈夫?」




…………え。



入ってきたのは、黒いやつとか変なのじゃ、なくて。



「…………ぇ」



「大丈夫?」



再度。
ふたりの男の子の片方が。
心配そうにあたしをのぞきこんだ。
肩に手を、置かれた瞬間。




「…………ぇ」




また。
あの、感覚。



さっきも。
今も。
もしかして…………。




顔をゆっくりあげて。
優しくあたしを見下ろす男の子と、教室のドアへと手を伸ばす男の子を、見上げ見る。
手を伸ばした瞬間。
黒い影が、消えた。



「嘘…………」



「嘘じゃねーよおまえ、変なもんくっつけすぎ。何なんだよその右目」
「え」


右、目?



あ。
そーいえば。


『おまえ、右目に食い殺されるぞ』


って。



「狼!!だから、怯えさせてどーすんだよ」
「だってユーリ、こいつトロすぎ」


/ 49ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp