第4章 はじまり
「巫 尊です。よろしくおねがいします」
黒板に書かれた自分の名前を反復して、変哲のない挨拶を終える。
顔を上げれば。
ここにも。
黒い影。
「…………」
頭痛い。
吐きそう。
案内されるままに席へと座り、襲いくる吐き気を耐えて俯けば。
「なぁおまえ、顔色悪くね?」
え。
ポン、て。
肩に置かれたあったかい手。
思わず反射的に振り向いた。
「『気をつけろよ』」
…………昨日、の。
男の子。
え。
あれ。
…………かるい。
身体。
さっきまでの頭痛いのも、気持ち悪いのも。
なくなった…………。
今。
「…………何、か、した?」
「は?」
「…………なんでもない」
『尊ちゃんの嘘つき』
『意地悪』
『もう尊ちゃんと遊ばない』
…………あんな思いは、もうやだ。
みんなが見えないものは、あたしも見えない。
見ちゃ、いけない。
言葉にしたら、いけないんだ。