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溺愛巫女は、喰べられたい

第4章 はじまり





あ…………。
どうしようまた、だ。



前よりもずっとしっかり見える気がする。
黒い、影。
影は影だったはずなのに、今日は姿形が、人間にも、動物にも見える。
いつもはただの黒い影、だったのに。




「尊?どうしたの具合悪い?」


学校へ行く通学路。
耐えきれなくて嘔吐するあたしのランドセルを背中から取り去って。
お母さんが優しく背中をさすってくれた。



「…………ここでも、駄目なの?」




がっかりしたような。
残念そうな、暗い顔。


「あ…………」



「お兄ちゃんが大変な時に、尊まで面倒かけないで。お願いだから」


「…………」



『ごめんなさい』

と口が動く前に重なった言葉たち。


一度飲み込んだ言葉はもう、口から出てこない。



「…………大丈夫。昨日、緊張して眠れなくて」
「…………ほんとに?大丈夫?」
「うん」



大丈夫。


何が。


大丈夫なのか。
良くわからないまま『大丈夫』(作り笑い)だけが、上手くなってく。



「…………っ」


黒い影が、ランドセルを押し潰す。
その分肩にかけられた、重圧。
重い体を引きずって。
なんとか一歩、踏み出した。
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