第2章 悪魔の右目
前は血を飲めば。
理性なんてほんと、飛んぢゃうくらいだったのに。
今はそれすらも全然効かない。
「…………もう、痛くない、から。大丈夫」
「『それ』はもう関係ない。俺が尊を抱きたい。狼にばっかりずるくない?」
「…………っ、ユー、リっ、さっき血、飲んだもん………っ」
あぐらをかいた足の上、尊の腰を掴んで膝立ちにさせれば。
肩へと遠慮がちに両手を乗せて。
また尊が涙を流す。
「うん。ごちそうさま」
にこりと笑えば。
「そうじゃ、なくて………、目、治らなくなっちゃう、よ」
泣かせたくないのに。
尊には笑っててほしいのに。
最近は尊、こんな風に泣いてばかりだ。
「大丈夫だよ」
尊の血を飲んでから。
悪魔の一部はダイレクトに身体に流し込まれる。
尊と同じように。
俺の場合、両目にアドレナリンが流れ込むみたいだ。
つまり興奮状態と同じ。
両目の血管に血が、集まる。
熱くて。
痛みを伴ってくる。
「でも…………っ」
「心配すんなよおまえは。俺たちにただ愛されてればいーの」
「狼………っ」
あれほど辛そうにしてたはずの狼が笑顔で、尊の頭を撫でれば。
尊は慌てて狼から顔を逸らした。
「駄目!!キスしないで…………っ」
「死刑宣告かよ」
「だって狼、まだ………」
「しー。黙って尊」
後ろから、狼が尊の顎を捉えて口付けする。
力が抜けた一瞬の隙をついて。
尊の腰をゆっくりと、沈めた。
「は………っ、ふ、ん!!ん、ふぅッッ」
あんなに狼にさんざん犯されたばっかなのに。
尊のなかはまだまだ全然きつくて。
腰を沈めるたびにきゅうきゅうと吸い付いてくる。
それもこれもさっきまで狼に愛されてたからだと思うと苛つきを覚えたのも事実で。
狼の形になってるなかを、強引にこじあけた。