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溺愛巫女は、喰べられたい

第1章 人、ならざるもの




「な………っ」


狼に促されるように振り向いた彼女たちの視線にばっちり晒された痴態。


傷から流れるほんの少しの血液を吸って、舐めて。
一生懸命に手のひらを舐めてるユーリの姿はかなりちょっとほんと官能的で。
当事者のあたしでさえ体温がかなり上昇してく。
ほんとになんでこんな舌の使い方するんだろう。

じゃ、なくて。

教室の凍てつくような空気に耐えきれずに。
我に返ったついでに、口を覆うユーリの指先に思い切り噛みついた。
だけど時すでに遅し。
すでにみんな教室を出た、後で。


「………っ」


晒した醜態を弁解する時間さえ、なくなった。






「尊をいじめるからだよ」

あぐらをかいたユーリの足の中、後ろからユーリが抱きしめながらそういえば。

「だいじょぶか、尊」

頭を撫でながら、少ししゃがんであたしを覗き込む狼。


「…………やり方」


「尊をいじめるからだって」
「怖がらせてどーすんの」
「大丈夫だろ、あれ、いじめられた子の念だな。これで少し凝りたんじゃん」
「最近尊にもはっきり見えるようになったね」


…………はっきり。

そうか。
前はただの黒い影だった。
だけどはっきり見えるってことは。



「…………あたしもそろそろ、喰われるのかな」



「…………」



大丈夫。
いつまでもこのままじゃいられないって。
ちゃんとわかってるよ。
だからそんな顔しないでよ。
狼。
ユーリ。
もともとわかってたことだもん。




「…………帰るか」

「うん」



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