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溺愛巫女は、喰べられたい

第1章 人、ならざるもの


「!!」


この声。


「狼くん!!」



彼女たちの行き手を阻むようにドアに手を掛けて。
狼が、彼女たちを見る。


「え、え、え!?誘ったら狼くん、遊んでくれるの?」
「もちろん」


む。
何あの笑顔。
あんな笑顔、あたしもらったことない。



「あんな作り物欲しいの尊は」
「ゆ………っ」

「しー」って。
ユーリの手のひらがあたしの口を、覆う。





「じ、じゃあ今!!今日!これから遊びに行かない?」

きゃー。
やったー。
って。
喜ぶ彼女たちに駆け寄ろうと足に力を入れた。
けど。
立ち上がる前にユーリにまた、口を塞がれたまま引っ張られた。

「んんん!!」

だって。
あの子たちに憑いてるの。
早く、教えなきゃ!!

「しー。尊」


なんで!!って。
ユーリの指に噛みつこうとした、瞬間。
チラリとこっちに視線を向けた狼と、目が合った。

「?」


「5人でカフェはだいぶ中途半端じゃね?他行くとこねーの?」
「え…………」
「ご、にん、って」
「ユーリくんも、来るの?」
「ユーリ?さぁ?来んの?」
「え、だって」
「あとひとりいんじゃん。…………ほら」


狼が、ひとりの子の肩に手を置いて。
後ろを指した、途端に。
一人だけ顔色が変わった。


「………きゃあああああっ!!」

「何、翠?嘘やだ、どーしたの?」
「ちょっとほんと、やだ。なんなのほんと」






ビクン………っ

「尊、手のひら血が出てるよ」

あたしの口をユーリの手のひらが塞いだまま。
先ほど擦りむいた右手にユーリの唇が、触れて。






「人の善意はさ、ちゃんと受け取った方が良いと思うよ。………ね、『巫さん』」




ギク。
待って今。
駄目。
こっち見ないで。


「………っ」

離してユーリ!!って。
思い切り絶対わかってるはずなのに。
意地悪に細くなった目元。
口元なんて弧を描いちゃって。
ユーリは手のひらの擦り傷へと舌を這わせて舐め出した。
もちろん。
あたしの口、塞いだまま。


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