第1章 人、ならざるもの
あやかし、魔、物の怪、怪異。
逢魔が時。
昼から夜にかかる黄昏時。
それらは暗闇から姿を現す。
対価と引き換えに、人間たちの願いを叶えるために。
願いを乞う人たちは後をたたず、彼らは毎夜毎夜、満腹になるまで狩を続けるのだ。
対価はその、『生命』。
だけど。
対価の代わりに支払われたあたしの右目は悪魔のものだった。
いずれ右目に喰い殺される。
教えてくれた男の子。
彼らもまた、人ならざるもの。
人の世に紛れてひっそりと暮らしてきた。
あたしが喰い殺されないよう協力すると言った彼らの条件。
『愛されること』。
そして。
『愛すること』。
右目に喰われかけたあの日。
彼らもまた、あたしの呪いの犠牲者なんだ。
あたしを助けてくれたばっかりに。
あたしを、連れ戻した、ばっかりに。
だけどあの日あの時。
彼らがあたしを助けてくれなければ。
間違いなくあたしは今ここにはいない。