第1章 人、ならざるもの
「簡単にユーリにのせられんなよ。あーあ、こんな顔、他のやつに見せらんねーじゃん」
ツカツカと歩み寄りながら。
あたしの前でしゃがんで、顎を取る。
「狼…………」
「なぁ尊。俺ならこんな意地悪しないで今すぐ欲しいものあげられるけど、おまえどーしたい」
「狼ずる」
「おまえは他のやつに尊のこんなエロいの、見せたいわけ?」
「…………だって尊すぐスイッチ入るんだもん」
「おまえだろーがいっつもいっつも。あーくそ!!昨日の今日でこんなんするはずじゃなかったのに。だいたいユーリ、おまえのむだけって」
「のむだけで終わるわけないの、狼知ってたでしょ?知ってて見張りなんてしてたくせに、よくゆー」
「別に、俺は…………!!」
「狼!!ユーリ………っ」
予鈴鳴った、なら。
じきここにも人が来る。
仲良く喧嘩してる場合じゃないよ。
「我慢する、から………っ!!この熱だけなくして。おねがい………」
「…………どーして欲しい?」
「ユーリ!!またおまえ………」
狼に「しー」って、意地悪に笑うユーリの目を、見て。
ユーリにしがみついた。
だって。
終わらない。
このままじゃ終われない。
だから。
「おねが、い。………イかせ………っ、て」
「…………りょーかい」
ユーリの欲しい言葉を、言うしかないんだ。
「狼、尊にキスしててよ」
ゾクゾクする。
ふたりの熱が、充満するこの空間。
「………っ、ぅ、ああ!!」
「尊こっち。声我慢な」
「んぐ………っ、ぅ、ふぅ」
ユーリの優しい意地悪な熱に溶かされて。
狼の、激しくて優しい熱に溺れる。
ふたりの好意の上にどっぷりあぐらをかいてるのは、たぶんきっと。
あたしの方。