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溺愛巫女は、喰べられたい

第1章 人、ならざるもの





…………やっちゃった。


またやっちゃった。
毎回、こう。
狼やユーリに抱かれると理性がとぶ。
なのに記憶だけはきっちり残ってて、毎回後悔と羞恥心で目が覚める。




はぁ。


ため息ひとつ。
教室へと続く階段に足をかけた。





「…………っ」



しま………っ。
油断した。


手すりに捕まろうとした右手がそのまま引っ張られて。
足がバランスを崩す。
落ちる…………!!
そう、思った瞬間に。
ぐん!!て。
力強い腕の中。
腰が支えられて、そのまま抱きしめられた。



「………っぶね」

「………ユーリ」
「大丈夫か?尊?ユーリ?」
「右手がじんじんする」
「ご、ごめんユーリ!!大丈夫?」


さっき、落ちるあたしのこと支えるのに右手だけ手すりにつかまって体重かけたから。
もろにあたしの体重、かかったかも。


「こんくらいへーき。………尊。気をつけなきゃ」
「ごめん」


黒い影。
それは、年を負うごとにクリアになって。
今でははっきりと姿形が良く見える。
そして時にはこんな風に、人間(あたしたち)を攻撃してくる。


「怪我なくて良かったじゃん、な」
「狼は尊に甘すぎ」
「ユーリは大袈裟すぎ」

ユーリの腕の中に抱きしめられたまま、頭の上でふたりのじゃれあいが始まって。
たくさんの人たちがそれを遠巻きに見てく。



「何あれ、絶対わざとだよね」
「階段で転ぶとかわざとらしすぎ」



そう。
こんな野次だってもう、慣れた。


「………行くか、遅刻する」
「うん」


狼もユーリもすごくモテるから。
あたしが独り占めしてるの、たぶんたくさんの人に恨み買ってる。


「気にすんなよ」
「尊といたくていんだからさ」


ふたりはいつもそう、優しく笑ってくれるけど。
だけど違う。
みんなが思うような、綺麗な関係じゃないんだ。
あたしたちは。


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