第1章 分岐点 ※
耀哉side
「……よろしかったのですか?結霞さんに渡さなくて」
結霞が部屋へと戻ったあと、あまねが私に訊ねてくる。
『…ああ、これでよかったんだよ』
結霞の父と母は元鬼殺隊員だった。父親は霞の呼吸、母親は櫻の呼吸の使い手で、共に柱に匹敵するほどの実力者。よく憶えている。忘れるわけなどない。
10年以上前に二人共、父親の方は片腕と片足を失くし引退。母親は片目を失った。
それでも鬼殺は続けるつもりだったけれど、母親も当時は恋仲だった男の戦線離脱を追った。
一人には出来ないから、と。手放すのは惜しい子たちだった。
娘も又、鬼殺に対しての才能があった。開花していい才能なのかはわからないけれど、恵まれた身体能力の高さに私は圧巻した。まさに天賦の才能だった。
私にもその力があれば鬼を倒せれたかもしれないなんて、叶うことのない夢まで見てしまった。
『結霞は鬼殺隊に入る覚悟をした。それの足枷にはなってはいけないからね』
きっとこのことを聞いてしまえば、結霞は自分のことを追い詰めてしまう。
そんなこと、あってはならない。
彼女が苦しむ必要など、ないからだ。
産屋敷耀哉の右手には、手紙が握られていた。