第1章 分岐点 ※
櫻乃side
「…あら、櫻乃さん。隠の方が来られましたよ」
そう、あまね様は庭にをやる。そこには一人、全身を黒で包んだ隠の人が立っていた。そして頭を下げる。
「行っておいで結霞。里長にもよろしくね」
『はい!…それとあまね様。』
「…?はい」
『私のことは下の名前で呼んでほしいです。』
「…良いのですか?私が…」
『あまね様だからですよ。だって私達、家族でしょう?』
悩んでいるあまね様に、私は言う。
「…では、…結霞さん。」
噛みしめるように私の名前を言った。
そういい頬を染めて微笑んだ。……可愛らしい…。
『はい!では私は今から刀鍛冶の里へ行きますので…』
腰元に刀があるのを確認すると、立ち上がる。
耀哉様たちがくれた綺麗な羽織が、私に力をくれている気がした。
「夕刻までにはお戻りくださいね」
『はい、行ってまいります』
私は隠の元へと行く。
「目隠しはしなくていいよ。気をつけて行ってらっしゃい」
耀哉様はそう微笑んだ。隠の人は目を見開いて私を見る。
…そう、刀鍛冶の里や産屋敷邸に目隠しをせずに行けるのは柱や、限られた隠のみ。
「…では刀鍛冶の里まで案内します。」
『ええ、よろしくお願いしますね』