第2章 瀕死になった主人公と五条(ネームレス)
「そういえば、アンタは好きな人居ないわけ?」
始まりは、任務が終わり迎えに来てくださった伊知地さんが運転する車の中で、呪術高専同期の野薔薇に何気無く言われたこの一言だった。
そう言われれば、幼い頃から呪霊が視えていた私に恋人は愚か、友人さえ居たためしが無くて、私には無縁の存在だと心のどこかで思っていたことに気がつく。
その上好きになる、という感情も全く分からなかった。
「私、恋愛的な意味で好きになるってことがどういう物なのか、イマイチ分からないんだよね……。呪霊が視えるからって理由で、野薔薇と出会うまで友達すら居なかったし」
野薔薇は『変なこと聞いてごめん』って言ってくれたけど、それが真実でそれが私の人生においては普通だった。
呪術師にとって、非術師は守るべき存在だ。
たとえ、報われなかったとしても、それが私をいじめていた奴らだったとしても、私は迷わずに自分の命を投げ出すだろう。
理由は何だっていい。偽善、だと嘲笑われてもいい。そう思う私は、やっぱり少し壊れているのかもしれない。
私の長所は呪力を圧縮出来るところにある。
それを術式に応用して、呪具である二丁拳銃に圧縮した呪力を込め弾丸として射出する、野薔薇と似たような飛び道具みたいなもの。
彼女とは、そんな似たような共通点があることから親しくなった。
「お疲れサマンサ!」
任務後、高専に戻った私たちを出迎えたのは一年担当の教師、五条悟。その人だった。