第2章 一話 : 紛れもない記憶と現実
「ジーザス......」
それを見上げ、口をついて出てきた言葉はそれだった。まったく、 語彙力がもっと欲しいと思う、今日この頃。
しかし、語彙力がなくなるほどの事態に現在進行形で直面してしまっているのだから、この際許してほしいと思う。
なんてことない、ただの中学校の名を掲げている銘板なのだ。
そんなありふれ、しかもそこに彫られているのは三年間、現在進行形で通っている我が母校の名前。
それだけならば、よかった。 本当に、よかった。
『立海大附属中学校』
嫌というほど見てきた、学校名。
母校なのだからと言われてしまえばそこまでなのだが、私の場合まったく別の問題が浮上する。
「おや、貴女でしたか。 どうしたんです? こんなところで」
カチカチに固まり、校舎を凝視している人が居れば声を掛けないほうがおかしいだろう。
しかし、今の私は背後から投げ掛けられた声にどうしても、振り返ることができなかった。