第5章 ただいま。
武道場の壁に背をピタリとつけたさんは俺に気づくと、「しーっ」と人差し指を口に当てた。
無傷な様子の彼女に安心しつつも、意味が分からず首を傾けた。
静かにしろって事だろうか…
「いや、、呪霊はーーー⁇」
そう言いかけた時、
「バアッ‼︎」
ついさっき自分が入って来た扉から、ヌルリと呪霊が頭を出した。
「っ‼︎‼︎」
玉犬がすかさず飛びかかるが、既のところで呪霊は消えてしまった。
「ーーーー消えた?」
『恵君っ!』
さんが息を切らしながら駆け寄って来た。
「さん、これどういう状況ですか…?」
『はぁ、はぁ、、もう分かってると思うけど、被害を出していた呪霊はコッチの方みたい。
もう一体の方は恵君、祓ってくれたんだね。』
さんはしゃがみ込み、足元に座る玉犬の頭を撫でながら目線を俺に向け微笑んだ。
その額には汗が滲み、前髪が張り付いている。
その姿に不覚にもドキッと心臓が音を立てた。
「・・・あっちは低級の呪霊でした。それよりこっち、、」
『それなんだけど、、こっちは私に任せてもらってもいいかな?』
真っ直ぐな瞳と視線が交わる。
「何か策があるって事ですか?」
『うん。実は今ね、鬼ごっこしてる最中なの。』
「ーーーーは?」