第5章 ただいま。
我が物顔で悠仁の部屋へと入って行く真希達とその後ろで遠慮がちに「お邪魔します…」と入って行く。
そんなの後ろ姿を見ていた悠仁がボソッと呟いた。
「・・・・なぁ、伏黒。」
「あ?」
恵は真希に言われた通り、棘とパンダにラインを送っていた。
「あの人、、俺めっちゃストライクなんだけど。」
「・・・"あの人"って。お前の元カノなんだろ?」
「いーや?初対面だけど??」
「はぁ⁇⁇」
恵は手にしていた携帯を思わず落としそうになった。
初対面ならさっきまでのあのやり取りは一体何なのか…
恵は眉間のシワを更に深めた。
「あーー‼︎おいっ釘崎っ‼︎勝手にベッドの下漁るなよっ⁈」
慌てて部屋の中へと駆け込んで行く悠仁を見ながら恵はため息を吐いた。
「・・・マジで何?」
その時、恵はふと以前乙骨から聞いた話を思い出した。
2年には本当はもう1人同級生がいて、今はワケあって離れ離れになっていると。
でもいつか必ず戻って来るって皆んな信じてるんだ、とそう話していた。
普段あまり感情を表に出さない乙骨が、その人の話しをしていた時は珍しく悲しげに顔を歪ませていたのが印象的だった。
・・・・もしかして、あの人が?
真希の反応からして、恐らく間違いないだろう。
ラインを送ったら自分はこっそり部屋へ戻ろうと思っていたが、気が変わった。
唯一、手離しで尊敬する乙骨先輩にあんな表情をさせる人が一体どんな人物なのか興味が湧く。
いたって"フツーの女の子"って感じに見えるけどな。
恵は賑やかな声のする部屋の中へと足を踏み入れた。