第5章 5th
目が覚めると、隣に研二が居なくて。
そんな日々が当たり前だったと、
どこか思ってる自分もいて。
布団からでて、ゆっくりと起き上がる。
初めに足をつけた床が冷たい。
「…」
テレビをつけて、右上に映る時計が家の時計と合っていて違和感を感じる。
5分早めた時計は、もう存在しない。
出したアルバムも、そこにはもうなくて。
きっと研二が片付けたんだろう。
ぎゅっと、服の裾を握る。
寒い、…。
パジャマのせいか、隣に研二が居ないからか。
隣に居ないなら、目なんて覚めなくてよかった。
体を丸め込む。
そうしてもまだ寒かった。
どうしても寒くて、けど布団に戻る気もなれなくて。
ゆっくりと立ち上がる。
きっと、
怒られるんだろうなって思いながら、
しばらく開けることの無かった引き出しの中から取り出したのはいつか処方された睡眠薬。
飲んだら夢で会えそうな気もして。
そうだ、水…
水飲まないと…。
めんどくさいと思いながら、透明なコップに水を注ぐ。
注いでるうちに、ガチャガチャと玄関から聞こえる。
「ただいまー」
感じの声が聞こえる。
「あらま。起きてたの?…って、酷い顔してどーした?」
キッチンのカウンターにビニール袋を置いて、上着を脱いだ研二。
ぎゅっと握った薬の包みが痛い。
尖ったアルミが手のひらを刺す。
「何持って…」
近づいて、私の手を取る研二。
貸してって言うから、素直に手を離した。
「これって…、何の薬?」
「……」
「ゆり、この薬必要ないでしょ。さっきまでぐっすり寝てたよ?」
「…」
「まだ寝るつもり?眠り姫にでもなりたいの?」
少し戯けていうのは、多分研二の優しさ。
だけど、声色が少し強くて、
怒ってるのなんて、
わかってる。
「研二が、居なかったから…」
視線を俯かせる。
研二の顔、見てられなかったから。
「…心配しなくても、まだこっちに居られるから」
ねぇ、それってどのくらい?
どのくらい居てくれるの?
タバコと
研二の匂いが私を包む。
朝の冷たい空気と同時に、研二の温もり。
「驚かせてごめんな、バター切れてたから買ってきたんだよ」
手慣れたように私を抱きしめる。