第2章 2nd
うつらうつらとしてきた頃、研二はあの頃みたいに私を抱き上げて、そっとベットに寝かせる。
「まだ、寝たくない」
「明日もいるから、明日だけじゃない。ずっとそばにいるから、俺は」
うん、…知ってる。
研二はそういう人だった。
「あの歌、本当だったんだね」
「どの歌?」
「お墓に居ませんってやつ」
「そうだねぇ、…だって、もったいないだろ?こんな姿じゃ仕事もしなくていいし、寝食もトイレもいらないんだから、ずっと好きなやつといられる。たとえ、言葉は交わせなくても。」
ベットサイドに座って私の髪を触る。
「けんじ、くすぐったい」
「触り溜めしとかないと。」
「いじわる」
「そうだよ、ずっとそうだった…俺は。そうそう、フルヤちゃんのことだけど…」
だんだんと、研二の優しくて甘い声が聞こえなくなって、私の意識も遠くなって、あぁ、今日が終わっちゃう…
なんて、微睡の淵で思った。
もう、会えなくなっちゃう…。
ーーーーー
ーー
「ったく、最後まできけって。
大事なこと、言おうと思ったんだけどなぁ」
ゆりを先に残していったくせに、こんなこと言うなんてきっと無責任だ。
それでも、伝えなくてはいけないことがあって。
今回のことは、きっとそれを伝えるために彼女ともう一度会えたんじゃないかと思っている。
タバコを蒸そうとポケットに手を入れても、そういやもう切らしてたんだと肩を落とす。
「はぁ。…口惜しいぜ。」
ちゅ、
と、眠りについた彼女の唇を奪って、
彼女の晩酌の片付けをする。
明日彼女が大変じゃないように。
「あと、どれくらいこっちにいれんのかねぇ」
少し透けた体を見て思った。
この世界を去って、7年。
いろいろ気掛かりなことはあったけど、俺が居なくても案外上手く事は回って。
そんなもんかと思ってこっちを見てたけど、
俺のために必死になってくれた親友と、俺に囚われた彼女だけがあの日で止まってしまったような気がする。
時計が静かに鳴って視線をうつす。
ほら、
俺のために5分進んだ時計すら、まだ直ってない。