第2章 よろしくね。
幻太郎side
彼女が眠りに着いたあと、
自分もお風呂に入り、今後のことを考えていた。
思ったよりも長く入っていたみたいだ。
寝支度を整え、自室に入ろうとすると
彼女の部屋から声がする。
「みやびさん?起きてるんですか?」
返事がないあたり、起きてはいないようだが、様子がおかしい。
今や女性の部屋。返事を待たずに開けるのは気が引けるが、失礼しますねと声をかけて扉を開ける。
ごめんなさい。と謝りながら、魘されている様子に
これは起こした方がいいのではと判断した。
「みやびさん?みやびさん!!」
何度目の呼び掛けか、うっすらと目を開けた彼女は
相当寝苦しかったのだろう。
額に汗を滲ませ、目からは大粒の涙が零れた。
『げんたろ..さん...?』
みやびside
「...さん!...みやびさん!!」
誰?私を呼んでいるのは. . .
目を開けると焦った幻太郎さんがいた。
「だいぶ魘されていたようなので..起こしてしまってすみません。」
『いえ...こちらこそ、ごめんなさい。
お休みのところだったんじゃ?』
「気にしないでください。それよりも、大丈夫ですか?」
何も聞かないからとこのまま黙っておくのも、
良くないな... 。
話があると察したのだろうか。
落ち着きますよと、ココアを持ってきてくれた。
『住まわせてもらうのに、何も言わないままというのも、心苦しくて。
聞いてもらってもいいかな?』
「お話を聞くのは小生の得意分野なので」
そう微笑む彼に
いい話をしてあげられないのが、申し訳ない。
『私、付き合っていた人にずっとDVされていたんです。』
そう切り出し、ビルから飛び降りるに至経緯を話した。
彼はただ黙って耳を傾けてくれている。
「赤い口紅...とても似合っていましたよ。」
『赤が良かったの。強くなれるような気がして。
でもね、逆効果だったみたい。弱さが目立ってしまって、結果こんなことになってしまったから。』
黙ったままの夢野さん。
反応を見るのも怖い。けど、と俯きがちに話していた顔を少しあげて表情を見る。
『ゆ、夢野さん!?どうして泣いて..っ!?』
涙で頬を濡らしている彼に驚いていると、
優しく抱きしめられた。
「貴女が!..泣かないからです..っ..」