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朝凪のくちづけ【R18】

第5章 侵食を繰り返す荒波の記憶



今までで一番長い口付けだった。

与え合う、というより奪うかのように激しく。

硬くすぼまれた舌が唇の隙間に入り込み、口内をまさぐっては押し付け、扱くかのように擦り上げ、かと思えば柔らかく撫でてては余韻を慰める。

私の背中や腰が浮くたびに、圧迫される乳房は衣服を通し、熱く硬い胸に形を変えては摺り潰されて。
背中から後頭部を変則的に往復する彼の腕は強くて、痛いぐらい。


求められる。

歯茎や舌だけじゃなくって、どちらのものともつかない睡液が通り過ぎる喉までも。

まるで渇きを満たすように、深くまで。


その彼が、僅かに与えてくれる合間から漏れる、私の喘ぎに似た声も掻き消される。

……そして絶頂を迎えるときと同じように足先までピンと伸び、私の全身が細かく震えた。


ただただ圧倒されて、私は抗うことも出来ず意識を失いかけるほどに……それに呑まれた。




「……怖いか」



やっと顔を離したタクマさんが私の肩に回していた腕の力を緩め、どこか熱を帯びた目を落とす。

怖く…ない。 打ち震える唇の間からそう答えた私の声は、空気に吸い込まれて音にならなかった。


心なしか彼の表情が柔らかくなり、体を私の横にずらしたタクマさんは、私が落ち着くまで汗で湿った髪を撫で続けてくれた。





あんなキスをしたというのに、それからのタクマさんはいつも通りだった。
また別荘に戻り彼が焼いてくれたバーベキューをいただいて、駅まで送って貰って帰途に着いた。


……けれども一日中、私の頭はどこかフワフワしていて、使いものにならなかった。




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