第4章 半径一メートルの密度
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そしてそれから約一時間後。
目を見張る速さで夕食の支度を整えたタクマさんだった。
「バーベキュー、余ったら明日食おうぜ。 串に刺して冷蔵庫に入れてあるから」
グリルしたサザエからはガーリックバターの良い香り。
ホカホカと湯気の立ったアクアパッツァ。
それからなんで短時間でピザの生地まで作れるの、この人。
「タケと仲良い理由? 元は料理仲間。 店の内装とかメニューとか、二人でやってて楽しかったな」
彼について、私にはまだ知らないことがたくさんあるみたい。
けれど、知るたびに増えていく『好き』。
願わくば、タクマさんもそうでありますように。
夏の夜。 庭全体を照らすように明かりが灯る。
それからもズラリとテラスの丸テーブルに並べられるご馳走に私は二の句もつけず、内心複雑ながらも罰ゲームのキスを幸せな気持ちで受け止めた。