第3章 ハチミツ味のSavage CAFE
「なんだか、すごくごめんなさい……」
とりあえず私はタクマさんに謝罪しておいた。
娘として。
「……さすが、オマエの親父だよなあ。 さて、どうするか。 綾乃、免許取ったって言ってたよな? とはいえ、確か一年経ってないからレンタカーは無理。 で、ここで女一人も物騒か」
これは、ジェットコースター二周目なのか。
我ながら現金だと思うけど、父に感謝。
「はい! タクマさんが居てくれたらいいと思いますが! あ、でもお家の人が気にする?」
「オレ兄弟居ないし、一人暮らしだけど」
「じゃあ、新婚さんごっこできるね!?」
テンション高く提案を口にすると、タクマさんがハア、と息を吐いて腰に手を当てた。
「……それ、イミ分かってんの?」
「私、結構お料理出来るよ!」
「多分オレのが上手い」
サラっと、彼が口にする。
確かに、一人暮らしならそうかもだけど、アウトドアな父親の影響で、実は私も色々出来るのだよ。
「むっ、じゃ勝負する?」
「なに賭けて?」
それでふと、さっきの車でのことを思い出した。
「んー…えっと、私が勝ったら、またさっきのキス、とか……?」
とっても気持ちよかったから、してくれないかなと。
それになんだか、複雑そうな表情を返すタクマさん。
「……それオレからしても、罰のイミねぇし」
「じゃあ大丈夫だね!? とりあえず入って! 中案内するよ」
「……いっけど、やっぱ…なんだよなあ……」
「え、なあに?」
世間の連休は、確か明後日までのはず。
「別に」
気の進まない様子のタクマさんだったけど、そんなことは気にならないぐらいに私は浮かれてた。