第9章 One hundredth time「少し」
私の胸元や首すじに、次々と押される所有のしるし。
全部タクマさんのものになりたい。 確かにそんなことを言い出したのは私の方だと思う。
そしてそれから。
性急なキスのあとにデッキの上に突然倒されて胸や肩を押し返そうとするも、タクマさんの体は微動だにしない。
「待っ……ここ…そ、外…っ」
ここの周辺に家などはないといっても、屋外でなんて。
仰け反って逃げようとすると顎や喉に彼の唇が当たるし、体を捻ろうとすると耳の後ろをぞろりと舐められる。
「……た…タく」
さらに困ったことは、そのたびにゾクゾクしてしまう自分の体。
段々と先細りになっていく抵抗の声もただの吐息に変換される。
どことはいわず、衣服の上から私の体中を彼の手が這う。
確かめるように、探るように。
ちゃんとここに居るよ。 そう言いたくなるほど、私の形を彼の手のひらや指が衣服越しの肌をまさぐってくる。
目を閉じているタクマさんはなにかに憑かれてでもいるようで。
お酒を飲み過ぎたのかとも思ったけど、せいぜいグラスを一、二杯空けただけなのに?