第1章 朝凪のくちづけ
「大学行ったらどうせすぐ彼氏作んだろって思ってたし、向こうで就職したらしたでまた環境変わって出来んだろとか」
「いやそれはありえないよ?」
何年片思いしてると思ってるの。
「知らねーって。 いつ来るかも分かんねえのに待つ方の身にもなれよガキ」
「ガキじゃない」
「そこ? ……んなの分かってるわ」
少し体勢をずらされ、お腹の下辺りに何だか硬いものが当たってるのが分かった。
……これって。
それで私の顔がぼっと火照る。
「ロリコンじゃねえからな。 オレは」
そんなよく分からない事を呟いている。
「……タクマさん」
「ん?」
「恥ずかしいのですけど」
もう日の出も過ぎて辺りは明るい。
そして私は上半身裸というのが今更ながらにじわじわくる。
「…………」
彼が手を伸ばして私が脱いだ上着を取り、それで私の背中をくるんでからまた羽交い締めにした。
着るために離してはくれないのだろうか。
「……あの」
「なに」
「こっちで就職していい?」
「……オマエ、今まで何聞いてた?」
「いい?」
「いー、けど。 連絡先教えろよいい加減」
「ホント!?」
「っだから起き上がるなってば!」
「ッむぐ!」
「……たく」
こういってはなんだけど、タクマさんって大抵は不機嫌そうだ。
なのでそれが彼の平常運転だとすると、今は実は機嫌がいい方なのだと、彼を長年見てきた私には分かる。