乙女のしとやかさ【宇髄天元】【鬼滅の刃】R18♡あり
第1章 1 新しい朝
ある日、夕食の支度の為に町に出ていた。
元気に走り回る子供
杖をついたおばあちゃん
楽しそうに会話をしている恋人達
なんてことない日常の風景。
しかし、ふと、ある家族が私の目に止まった。
大きなお腹の女性が、5歳くらいだろうか?小さい女の子と、男性に手を引かれてゆっくりと歩みを進めている。
彼らは、しきりにお腹をさすっては顔を見合わせて、穏やかに微笑む。
(あぁ、お腹に赤ちゃんがいるんだ。愛する男性との愛の結晶である赤ちゃんをお腹に宿している。女の子は、兄弟が出来るんだなぁ)
私はその美しい光景から目が離せなかった。
と同時に、酷く切なく、愛しく、哀しい気持ちが胸に広がっていった。
私は家族の温かさを知らない。
私は、幼い頃から優秀なくノ一として一族の役に立つために厳しい訓練に明け暮れた。
幼くしてなくなった兄弟達も沢山いた。
人には到底話すに忍びない事もしてきた。
たった13歳という若さで家族と離れ、宇髄家に嫁いだということもあり、家族との思い出も少ない。
私は彼らが羨ましかった。
幸せに、穏やかに暮らす彼らが。
私は幸せになりたかった。
天元様は出会った頃、しきりに
「生きていることに価値がある」
「任務遂行より命」
と私達に言って下さった。
くノ一としてぞんざいに扱われ、自分の命など気にかけなかった私たちに、"生きていい"と教えてくれた。
そう、天元様は私に"生き方"を教えてくれた。
その時は、それだけで十分だった。
"生きたい"と願ってもいい。
それを許されただけで幸せだった。
でも、人間という生き物は本当に愚かなもので、1つ幸せを手に入れると更に更にと欲張る。
私は、彼と、天元様と幸せになりたい。
彼と生きたという証が欲しい。
彼との子供が欲しい。そう願ってしまった。
でも、この願いを伝えたら天元様はどう思うだろうか、、、、
やっと戦いを終え、平和な日々を過ごす彼に私の勝手な願いを押し付けることがはばかられた。
それに、これは私だけの問題ではない。
まきを、須磨はどう思うだろうか、、、
結局、私はこの思いをずっと胸にしまい込んだまま日々の生活を送るのだろう。
この時はそう思っていた。