第88章 番外編 ご報告
突然、がらりと変わった空気に、呆気に取られているシカマルは、ちらりと隣にいるキリを見る。
握った手はそのままで、キリの手から熱が伝わってきた。
相変わらずキリは困ったような表情だが、今は少し照れが追加されているらしい。
目の前にいるシカクは、堪え切れない笑い声を漏らし、肩を揺らしていて。ヨシノはそんなシカクに呆れたように笑っている。
キリの表情からも、重々しいものは少しも感じられない。
ようやく、悟った。
シカ「……あー、なんだ。キリ」
キリ「はい」
シカマルの手の熱も上がり、キリへと伝わっていく。
シカ「俺はいつから間違えてんだ?」
困り果てたキリからは、珍しく返事がなかった。
最初からだ。なんて、先ほどのシカマルの真剣な様子を思えば、キリは言えなかったのだろう。
シカク「あー……くっくっ、シカマル」
散々笑って、シカクは目尻に滲んだ涙を指で拭った。
そして、にっと口角を上げる。
シカク「今日お前が帰ってくる前に、キリから先に聞いてたんだよ」
キリ「あの……ごめんなさい」
ひとつ納得がいく。
キリが途中でシカマルの服を引っ張ったのは、シカクがからかっている事に気付いていたからだったのだ。
それを教えようとしていたのに、シカマルは不安がっていると勘違いしてしまった。
シカ「はぁ……」
これでは、あまりにカッコがつかない。
悔しいので、どさくさに紛れてキリの手は離さないことにする。