第88章 番外編 ご報告
シカ(……お前と一緒に、報告しようと思ってたんだけどよ)
だから、キリと付き合い始めた日は伝えずに、キリが任務から戻るのを待っていたのに。
ほんの少し非難がましい視線を向けて、きゅっと、キリの手を握る力を強めてみる。
すると、キリもシカマルのその気持ちには気付いていたらしい。キリは申し訳なさそうに、こちらを見つめていた。
失態の恥ずかしさを隠すように、キリから視線を逸らすと、心行くまで楽しんだシカクと目が合った。
シカク「良かったな」
それは、からかいも何も混じらない真っ直ぐな言葉で、シカマルとキリの胸にストンと届く。
シカク「俺と母ちゃんは、シカマル、キリ。お前たち二人のことを誰より応援する。どうしても無理な時は、遠慮なく言ってこい」
「任せろ」と、優しく頷く二人の後押しには、どれほど大きな力があることか。
たとえ里の全員が反対したって、守ってくれそうだ。
無意識に、肩肘を張っていたシカマルの力が抜ける。
キリも「ありがとうございます」と、嬉しそうな表情を見せていた。
どうやら、シカマルがシカクの背に追いつくにはまだまだ時間がかかるらしい。
…………………………
報告を終えた二人は、並んで夜道を歩いていた。
今はアパートに帰るキリを送っているところだ。
途中からはずっと申し訳なさそうに、表情を曇らせていたキリが口を開く。
キリ「今日は、ごめんなさい」
その謝罪は、一人で先にシカク達のところへ向かったことに対してだろう。