第88章 番外編 ご報告
シカク「……口で言うほど簡単な事じゃねぇぞ」
シカクは机に両肘をつくと、口もとで軽く手を組んだ。
その表情は、以前と険しいままである。
ツン、とシカマルの衣服が引っ張られる。
視線を向ければ、キリが少し眉を下げていた。
キリがこのような表情をするのは珍しい。普段は敬愛しているシカクから、言及されて心配なのだろう。
食卓の下で、シカク達からは見えないように、不安気にシカマルの服を掴むキリの手を握った。
キリ「っ……!」
木ノ葉隠れに来てからのキリの苦労を隣で見ていた。
これからは、その苦労を少しでも回避して、無理なら共に乗り越える事が、シカマルの役目だ。
父親一人、超えられないようでは、行き先も不安である。
シカ「全部わかって、全部覚悟の上だ。この先なにがあっても、それはキリの存在を越えれねぇ」
易しくない道のりも、キリとならば歩みたい。
反対に、楽な道もキリが隣にいないのならば、必要ないのだ。
アカデミー時代にはあれほど、至る所で手を抜いて面倒ごとを避けていたのに、キリの影響力にはほとほと驚かされる。
きゅっと、キリの手を掴む力を強めた。
何度考えたところで、この手を離す選択肢は存在しない。
ヨシノ「父ちゃん、もうその辺にしてやりな」
張り詰めた空気の中で、ヨシノの声があまりに通常運転で、場違いだった。
シカク「ぶふっ、っくく」
それをキッカケにシカクは、たまらないというように、吹き出して破顔する。
シカク「シカ、シカマル……お前の気持ちはよーくわかった」
シカクはもう一度空気を引き締めようとするが、笑いがおさまってくれず、失敗に終わる。
どうやらシカクの悪ふざけはここまでらしい。