第88章 番外編 ご報告
その後は、夕食どきに再び会う約束は取り付けて、キリはイチカに文を書きたいと告げ、一度奈良家を後にした。
キリが去ったあとの奈良家では、先ほどの話で持ちきりだった。
ヨシノ「はぁ、それにしても良かったねぇ」
ヨシノは急須から、お茶を湯飲みに注ぐ。淹れたてのお茶の香りが、鼻を抜けていった。
シカク「本当にな。シカマルもついにやったか」
シカマルとキリが想い合っていることは、見ていて十分にわかっていたが、心配だったのだ。
ヨシノ「お互いに好きでも、駄目になることはあるからね」
特にキリが背負っていたものは、並大抵の荷ではなかったから。
それを誰かに預けることを嫌い、自己犠牲をまるで厭わないキリの性格を思うと、結ばれない可能性も大いにあった。
シカク「まあシカマルもあれで、懐が深いからな」
ようやく、キリもその荷を預けられる相手が出来たのだ。
シカマルの想いが成就した事も喜ばしいが、キリが誰かと共に生きる決断をした事に何より安心した。
シカク「これで、もうちょいキリも誰かに頼るようになりゃいいんだがなぁ」
ヨシノ「そうだねぇ」
無理やりでも自分一人で、向かっていくキリを慮って、苦笑する二人。
しかも、大抵のことは一人で何とかしてしまうから、ややこしいのだ。
以前シカマルが、こんなことを言っていた。
イチカからキリをよろしく頼まれた時に、言われたことらしい。