第88章 番外編 ご報告
もうシカクとヨシノにはシカマルが伝えているかもしれないと思っていたが、この反応を見ると、どうやらまだだったらしい。
キリ「はい」
奈良家の居間は、しばらくの沈黙が訪れた。
キリは自分でも一体、二人に何を伝えたいのか、伝えるべきなのか整理できていない。
関わりのある同期や、上忍はキリへの理解があるといっていい。
ただ、同胞殺しも親殺しも、相変わらずキリが背負っている名であった。
キリの味方をしてくれるシカクやヒアシ。綱手の影響力が強く、それらの悪評も少し落ち着いていた。
だが、それもこの間までの話だ。
現在、キリに対しての当たりは非常に厳しい。
理由は明確だった。キリが一般人の、しかも子ども相手に手をかけようとしたからだ。
ナガレに薬を打たれ、暴走した。シカマルが身体を張って止めてくれたから、事なきを得たが、あの時のキリは腰を抜かした少年に刀を突き立てようとしたのだ。
キリ(よく……覚えてる)
少年の恐怖に震える顔を。
その場に居た少年二人には、責任者としてシカクと、その場に居たシカマルも同行し、謝罪。そして、和解済みではある。
だが、親がそれを簡単に許さなかった。
これまで悪評は、キリの過去の話で、樹の里にいた頃の話だった。
なのに、今は木ノ葉隠れの里で実害が出てしまったことで、中立にいた住人や忍も、反対派が増える。
キリの意思ではないとはいえ、紛れもなくキリが行ったこと。
もともと反対派だった者達が、より過激になるのも、仕方のない事だろう。
キリ(なのに、もう抑えなくていいんだって思ったら……)
もとより溢れかえっていたシカマルへの想いが止まらなかった。