第88章 番外編 ご報告
キリ(……普通にしてればいいだけ)
今までと、キリとシカマル本人は何一つ変わらないのに【恋人同士】という関係が、胸の奥をむずがゆくさせて仕方がない。
それは凄く不思議な感覚なのに、嫌ではないからまた困る。
浮ついた気持ちを飛ばそうと、ふるふると頭を振っていると、建物内に入ったカカシと窓越しに目が合った。
キリ「っ……!」
それはもう激しくこちらを見ているカカシ。
何故だろう。今キリが何を思っていたのかなんて、カカシにはわからないはずなのに、全て伝わっている気がしてならない。
またそれを示すように、にっこりと笑みを浮かべたカカシは、ゆっくりと口を開いた。
カカシ(はやく会えるといいね)
キリ「~っ……!!」
マスクの上からでも分かってしまう自らの高い読唇術が恨めしい。
なんだというのだろうか。
キリの不在中にシカマルが伝えていないのであれば、カカシはキリとシカマルが付き合っていることすら知らないはずだ。
シカマルもわざわざ言って回るようなことはしない気がする。
それに交際した事を知っていれば、カカシの第一声は、交際に関する発言であったはず。
それなのにカカシに、ここまで心が読まれている事に少々納得がいかない。
もう頼むから火影室に早く入ってくれと合図を送るが、いつまでもそうしないカカシに、キリが退散する事にする。
それを楽しげに笑うカカシに見送られながら、キリは歩き始めた。
キリ(………ふぅ)
カカシのせいで乱された心も、歩くうちに落ち着きを取り戻していくのがわかる。
すると自然と足は、奈良家へ向かっていた。