第87章 ながい夢
そしてキリを見ていて、頭に浮かんだもの。
シカ「あー俺すげぇ欲張りなのかもしれねぇ」
つい苦笑いがこぼれる。自分はなかなか無欲な部類の人間であると認識していたが、何故だろう。
キリのことになると、そうもいかないらしい。
ひとつ夢が叶って、そしてまた、ながい夢が出来た。
それは、この先もずっと続いている夢で。
来年も、再来年も笑っているキリがいて、花嫁姿のキリの隣にはシカマルの姿があって。
いつか、二人の間には小さな芽を授かって、その成長をキリと二人で見守っていけたなら。
そんな姿が頭をよぎって、あたたかなその未来を願った。
シカマルにとって、これ以上の幸せはないだろう。
シカ「キリ」
キリ「はい」
願い続ければ、諦めなければ、夢は叶うのだと、今諦めようとしている奴に伝えたい。
その成長は、人よりも早い事や遅い事だってあるだろう。
けれど、手離してしまえばそこで終わりで。もう二度と、それを得ることはないかも知れない。
努力の結果が、想像とは違っても、どうか諦めずに進んで欲しい。
その先に見える景色は、その道を歩んだ者にしか、見えはしないのだから。
それは、まだまだ遠くにあるのかもしれない。でも実は、あとほんの少し先に、見たこともない絶景が待っているかもしれない。
その目でどうか、それを見てほしい。
シカ「行こうぜ」
キリ「どこへ?」
シカ「わかんねー。でもこんなとこでジッとしてらんねぇ」
ニッと笑って、手を差し伸べたシカマルに、キリも笑ってその手を取った。
キリ(あなたとなら)
キリ「どこへでも」
夢は穏やかでながい夢へと形を変えて、二人の道を照らし続けていく。
それはたくさんの痛みと愛しさが詰まった、長い長い物語。
ながい夢 -Fin-