第87章 ながい夢
雲隠れの抜け忍騒動で、雷影からの奇襲を受けた時。
何も対応出来なかったシカマルとヒナタは、キリによって守られた。
そしてキリは身を呈してシカマル達を庇いった結果、入院を余儀なくされる重傷を負った。
キリは気付いていないかも知れないが、もうこの時にはとっくに、キリは人情味ある人間だったのだ。
冷たく接していても、根っこにある人柄の良さはしっかりと垣間見えていた。
下手をすれば死ぬかもしれない状況で、自分と誰か、どっちを守るか。キリの答えは間違いなく、自分ではない誰かだ。
何せその後、シカマルとヒナタを庇っただけではなく、木ノ葉を煽るように悪く言う雷影の頬に、蹴りを入れるような女なのだから。
その時の光景を思い出せば、自然と苦笑がもれる。
シカ「普段は滅多なことじゃ怒らねーくせにな」
キリ「なんの話……?」
シカ「いや、ちょっと昔の事を思い出してよ。お前、雷影に蹴り入れてたじゃねぇか」
すると、キリも当時の事を思い出したのか、けろりとした表情で答える。
キリ「あれは、あの人が悪いわ」
「木ノ葉隠れの里に対して失礼」だと、キリはどこか不服そうにそう告げる。
自分のことは、何を言われても腹を立てたりしないくせに、どうも人の事になると心中穏やかじゃないらしい。
しかし、雷影の横っ面を蹴り飛ばした女など、果たして生涯で何人いるというのだろうか。
雷影はキリの度胸と真っ直ぐさをいたく気に入ったようで、その後、キリを雲隠れの里に引き抜こうとしていた。
雷影も雷影で漢気ある部類の人間だ。
漢気溢れるキリと惹かれ合うものがあったのだろう。