第87章 ながい夢
キリ「……伝わった?」
シカ「っ、悪い」
返答がなくて不安になったのか、そんな問いかけをするキリに、馬鹿な考えを巡らせていたシカマルはハッと我に返る。
いけない。今死んでしまっては、これから先にある幸せを見逃してしまうところだった。
ようやくキリの隣にいることが出来るというのに、そんな勿体ない事をしてなるものか。
シカ「キリ、好きだ」
溢れる想いを口に出せば、受け入れてくれる。
ぐっと抱き寄せれば、緊張からなのか少し身を硬くしているが、その身を預けてくれる。
シカマルの想いは、キリにちゃんと伝わっていたのだ。
思い返せば、この2年。
本当に色々な事があった。
シカ「不思議なもんだな」
キリ「?」
シカ「前は、お前とこうして打ち解けられるなんて思えなかったからよ」
それはもう、少しの希望も持てないぐらいに、思うことが出来なかった。
キリを初めて、目にしたあの日。
アカデミーに転入生がやって来ると、噂好きのくノ一たちは盛り上がりを見せていた。
その内容は、決して友好的に歓迎するようなものではなくて。不穏な噂が飛び交う中、キリは現れた。
他里からたった一人で来たキリは、凛とした佇まいで、その姿を綺麗だと思った。
ただ、そんな思いもつかの間。
次の瞬間、仲良くしようと声をかけたナルトとキバを一刀両断する衝撃的な自己紹介を聞いて。第一印象はめんどくさい、ただそれに限る。