第87章 ながい夢
シカマルは、またくるりと向こうを向いてしまいそうなキリの腕を掴んだ。
シカ「待たねぇ」
キリ「!」
シカ「もう何回待ったと思ってんだ」
ずっとキリだけを、キリがその目で見てくれることだけを、待ち続けていた。
こんな風に尋ねるのは、意地悪なのかもしれないが。これまでを思えば、あとほんの少しキリからの言葉を望んでもバチは当たらないのではないか。
キリ「ーーっ」
きゅっと口をつぐんでしまったキリの反応が愛らしい。
困っている様子のキリに、助け舟を出さずにいれば、キリの薄い唇が小さく開いた。
キリ「……っ、好き」
本当に心から好きなのだと、キリからそう告げられる。
シカ「……………」
すると、今度口をつぐんでしまったのはシカマルの方で。
確かに、それを望んだのはシカマル自身なのだが。
キリからの返事が、予想を遥かに上回る嬉しい言葉で、心臓を鷲掴みにされたようだった。
その破壊力に、どうすることも出来ず胸を痛めていれば、キリとその視線は混じる。
キリ「……大好き」
キリから更なる愛情を与えられて。
あ、やばい死ぬかもしれないと思った。
長年恋焦がれていた好きな女から、はにかみながらそんな台詞を言われて、何かが一周してしまったらしい。
もしこのまま死んだら、これほど幸せ過ぎる死因もないだろう。自分がその第一人者となるなら本望だ。