第87章 ながい夢
最終話 ながい夢
隣には、花が咲くような笑顔を見せるキリがいて。
シカマルとキリの間には、これまでにないぐらい、顔を覆いたくなるレベルの気恥ずかしさと、それとは比にならない幸福感に包まれていた。
シカ(……やべぇ)
今シカマルの身にに起こった出来事が、信じられない。
いやもちろん、キリを疑っているだとか、今更だと感じているだとか、そんな話をしているのではない。
ただただ、ずっとキリを好きだったから。
片想いだと思い続けていたそれが、くるりと反転したことに。それどころか本当は、キリも好きでいてくれていたという事実に、驚きが隠せないのだ。
シカ「……キリ」
名前を呼べば、どうかしたのかと、キリは穏やかな視線をシカマルへ向ける。
シカ「さっきの、もう一回言ってくれねぇか」
キリ「さっきのって……?」
こんな事を、尋ねる奴もそうそういないだろう。それは充分承知している。
シカ「……俺のこと、どう思ってんのか」
キリ「っ……!?」
ぱちりと丸く開いたキリの瞳に、シカマルの姿がうつる。
ああ、そうだ。こちとら長く片想いを拗らせているのだ。
しかもそれはキリ本人の口から聞いても、どこか実感を得られないほどに拗らせている。
こんな自分を女々しいとでも、何とでも言うがいい。それでも、キリの口からもう一度。
ジッとキリの目を見れば、ぼっとキリはその頬を染める。
キリ「ま、待って。い、今は……その」
そう促されて言うものではない、改めて尋ねられると恥ずかしいものがあるのだと、至極もっともな意見を返される。