第86章 景色は色付いて
シカ「っ!」
シカマルの背中に身を寄せて、ぎゅうっと抱きしめれば、もう直接聞こえてしまうのではないかと思うぐらいに、鼓動は大きな音を立てる。
少し震えている手に、シカマルが気付かなければいい。
するとそれは、わずか数秒。ほんの少しの時間で、シカマルから体を離された。
キリ(あ……っ)
迷惑だったのだろうか。嫌だと、不快に思ったのだろうか。
シカマルから置かれたこの距離に、胸がきゅっと詰まるようで、切ない痛みを伴った。
そしてすぐに、ずっと向こうを向いてくれていたシカマルがくるりとこちらに向き直るものだから、とても顔を合わせることが出来なくて、キリは視線を下げた。
シカ「……それには、俺も応えられねぇな」
キリ「!!」
その言葉に、思わず息が詰まる。
それは、キリの心の奥深くに刺さるように、大きな痛みを残した。
キリ「っ……ご、ごめんなさーー」
シカ「キリ」
謝罪は遮られ、次の瞬間。
キリ「……!」
ぐっと抱き寄せられて、気が付けば、シカマルの腕の中にいた。
シカ「キリ、好きだ」
今、シカマルとはゼロ距離で。耳元で、シカマルの声が聞こえる。
シカ「好きじゃねぇなんて、言えるわけねぇだろうが。どんだけ好きだと思ってんだ」
ぎゅっと抱きしめられたそれは、痛いくらいなのに、優しくて。
先ほどとは違う想いで、キリの胸はいっぱいになる。
シカ「……キリを好きになってから、一回もお前を好きじゃなくなったことはねぇよ」