第86章 景色は色付いて
キリ「あの日から、見えなかった景色が見えるようになったの」
人の優しさとか、あたたかさとか、貰っていたものは確かにあったのだ。
キリ「あなたのおかげで、前を向いてみようと思えた」
シカマルといることで、キリの世界は色付いて。
それはきっとどれだけの時が経っても、何一つ色褪せることはないだろう。
ここに来てからの自分は、あなたがくれた物語。
いつも、この手を引いてくれてありがとう。
その手を払ったこともあるのに、それでも、シカマルは手を差し伸べ続けてくれた。
その手に、何度キリは救い上げられていたことか。
いつも、怒ってくれてありがとう。
キリへの非難や、キリに敵対する者を相手に、いつだってシカマルは向かっていった。
その気持ちが、どれほどキリの傷を癒してくれていたことか。
いつも、そばにいてくれてありがとう。
こちらが歩み寄る事が出来ない時は、キリに歩幅を合わせて、近くで待っていてくれた。
急かすことも、責めることも、一度だってシカマルはキリにした事がなかった。
いつも、助けてくれてありがとう。
きっと、シカマルは自覚していないだろうけど。
シカマルがいて、数え切れないぐらいに救われた。
楽しいと思う気持ちや、愛しく思う気持ち。離れ難くなる気持ちや、ふわりと心が安まる居心地の良さを、与えてくれた。
キリ「っ……」
キリ(大好き……)
高鳴り続けている心臓に、胸が苦しくなる。けれど、どうかもう少しだけ耐えて欲しい。