第20章 面倒見
自ら手厳しく戦いつつ、その先の返し手をシカマルに伝える。そして指示はどれも、上忍のシカクから見ても最善の手を示していた。
それらも、もちろん褒めるべきところだが。なにより。
体術では実力に大きな差があるシカマルに対して、キリの指導は根気強いものだった。
シカマルもキリに応えようと力を尽くしてはいたが、なかなか要領の得ないシカマルにキリは何度も何度も繰り返し、伝え続けた。
途中でさじを投げる事もなければ、出来ないシカマルに苛立つことも無い。
相手に合わせ、理解するまで、その成長を待っていたのだ。
キリの戦闘能力もさる事ながら、新たに見えた一面に、シカクは笑みをこぼした。
シカク(ずいぶん面倒見がいいじゃねーか)
機嫌良く、シカクはキリへと一歩踏み出す。
シカク「キリ、次は俺と組み手だ。来い」
満点の組み手をしてくれた教え子に、今日は少し甘く手解きをしようじゃないか。
キリ「はい、お願いします」
…………………………
ーーシカクVS キリーー
キリ「!!」
シカクに蹴りを放とうとしたキリの体が、ピタリと不自然に動きを止めた。
視界には、冷めた視線を向けてくる息子の姿がある。
シカ「……親父、今は体術の修行じゃなかったのかよ」
シカク「まああれだ。忍術が禁止だとは言ってねーだろうが」
シカ(大人気ねー……)
なかなかどうして、楽に相手をさせてもらえない優秀過ぎる教え子に、シカクは苦笑いを浮かべた。