第86章 景色は色付いて
里外、そして里内でまで、時間も場所も選ばずに狙われ続けたキリ。そんな時、そばにいた者まで巻き添えを食らってしまう。
実際に、ナガレとのこと以外でも、シカマルを巻き込んでしまったこともある。
そして、フミやシカク、そんな手練れである忍であっても、致命傷を負ってしまうのだ。
キリ本人も、次襲われた時に、無事でいられる保証なんてなかった。
失うことが怖くて、また、好きな人に失う痛みを与えることも避けたかった。
そんな、ぬぐいきれない恐怖を。
キリ(あなたは……)
ナガレという存在、キリが最も懸念していた恐怖の重りを解き放ってくれたのだ。
そしてキリが、また誰かを殺めてしまう。そんな罪を犯す前に、あの時の惨状を繰り返させないようにと、シカマルは傷だらけになりながら、キリの道を守り続けた。
もうキリを狙うものはいない。
シカマルが、その手で枷を外してくれたのだ。
キリ「……反則、でしょう」
ぽつりと呟いたそれを聞き取れなかったシカマルは「もう一度言ってくれ」と、問い返す。
ああ本当に、もう反則だろう。
どうして、これで好きでないと言えるのか。好きにならない人がいるというのならば、その理由をまとめて提出して欲しい。
きっとキリはその理由の全てに目を通しても、納得など出来はしないのだろうけど。
とくとくと、いつもよりずっと速い鼓動を感じながら、キリはゆっくりと深呼吸をする。
ずっとずっとたくさんの気持ちをくれたシカマルに、今度は、自分が伝える番だ。