第86章 景色は色付いて
それは、今まで感じた事がないくらいの大きさで、キリの心に影響を与えていったのだ。
綺麗な景色を見た時、シカマルと見たいと思う。
美味しい物を食べた時、シカマルと食べたいと思う。
ふとした時に、シカマルの顔が思い浮かんだり、会いたいと思ったり。
ああ声が聞きたいな、なんて、そんなことまで思ってしまう。
シカマルに会えて、仲良く過ごせた時なんて、もうずっと心が幸せだと歌っていて。
シカマルが楽しそうであれば、嬉しい。シカマルが悲しそうであれば、自分まで胸が切なくなる。
つらい時には、力を貸したい。頼って欲しい。
キリと、その名を呼ばれるだけで幸せな気持ちになるなんて、そんな感情を初めて知った。
気が付けばいつも心は、シカマルだらけになっている。
何度、諦めようと思ったのだろう。
この恋心を押し潰して、消してしまおうと、何度もそう誓ったのだ。
キリ(でも、消えるどころか……)
その気持ちに反発するように、胸は苦しくなるばかりで。
ついには、嫉妬という感情まで生まれてしまった。
誰かに、こんな風に理不尽な思いを募らせたのは初めてで、コントロール出来ない負の感情に、どれだけ戸惑い、嫌悪したことか。
最初のうちは、簡単に諦められると思っていたこの恋心。
頭で理解出来ても、心がそれに追いつかない時があることを初めて知った。
キリが、シカマルへの感情を押し殺し続けていた理由。
それは、シカマルを危険から守るために他ならない。